英語学習教材では、いわゆる形式主語 it 構文は、評価を表す便利な表現として紹介されることが多い。たとえば It is important to study や It is difficult to understand のような例文が示され、英語では文頭に長い(重い)主語を置くことを避ける傾向があるため、不定詞節を文末に移し、その代わりに it を形式的主語として用いるのだと説明される。しかし、この説明は一見分かりやすいものの、To study is important という文も文法的には可能であるにもかかわらず、なぜ多くの場面で不自然に感じられるのかという疑問を十分に解消するものではない。
さらに、It is good to know のように主語がそれほど長くない例や、It is important for students to study regularly のように自然に文が拡張される例に触れると、「重い主語を避ける」という説明だけでは整理しきれないことに気づく。にもかかわらず、多くの教材では、この構文が日常的な英語で広く用いられる理由については簡単に触れられるにとどまり、学習者はこの形を「決まった構文」として覚える傾向に置かれやすい。
本稿は、英語学習教材における形式主語 it 構文の扱いを改めて検討し、とりわけその機能がどのように説明されているかに注目する。It is … to ~ を単に「重い主語を避けるための装置」としてではなく、評価を表す際に話し手がどのように情報を提示しているのかという観点から捉え直すことで、なぜこの構文が自然な用法として広く選ばれるのかを明らかにし、より一貫した説明の可能性を探る。
英語学習教材では、形式主語 it 構文は、文頭に長い(重い)主語を置くことを避けるための方法として説明されることが多い。To study is important のように不定詞節が主語となる場合、英語ではその節を文末に置く形が好まれるとされ、その際に it を形式的主語として用いると説明される。
この説明はしばしば書き換えの形式で提示され、不定詞節を文末へ移動させ、主語の位置を it で埋めるという手順として扱われる。形式主語構文は、不定詞主語の文よりも自然で滑らかな形であると紹介されることが多い。
また、It is important for students to study regularly のような for-句を伴う形や、important、difficult、easy、necessary などの評価的形容詞と結びついた用法も提示され、この構文は評価を表すための応用範囲の広い構文として紹介される。
しかしながら、「重い主語を避ける」という原則だけでは整理しきれない事例も見られる。たとえば、To study is important のような不定詞主語の文は、日常的な場面では堅く感じられることが多いものの、完全に不自然というわけではない。
To study is important, but resting is also necessary.
To make mistakes is natural in the learning process.
このように、不定詞節を話題として提示したい場合や対比を明確にしたい場合には、不定詞主語の形が選ばれることもある。
また、It is important to study と It is important that students study のような表現も存在する。両者は意味的に近いように見えるが、後続する節の構造が異なり、教材では別の項目として扱われることが多い。
さらに、形式主語構文は書き換え問題として導入されることが多いため、両者の選択が単なる文体上の違いのように受け取られがちである。しかし実際には、自然さや強調のされ方に差があると感じられることが多く、「長さ」の説明だけでは十分に説明しきれない側面がある。
教材を検討すると、形式主語 it 構文は主に文の形の問題として扱われていることが分かる。構造の作り方や書き換えの方法には重点が置かれるが、なぜその形が選ばれるのかという点については、十分に説明されないことが多い。
書き換え練習は両構文の形式的な関係を理解するうえで有効であるが、その選択が機械的な変換の問題であるかのような印象を与える可能性もある。また、It is important that S V のような関連構文は、機能的な共通点があるにもかかわらず、別個の文法事項として提示されることが多い。